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強大な力に屈せず生きるには

時間はかかりましたが、読み終わりました。

 

カナダの教訓 超大国に屈しない外交 (PHP文庫)

カナダの教訓 超大国に屈しない外交 (PHP文庫)

 

 著者の孫崎享さんは外交官として外務省国際情報局長、その後防衛大学教授を歴任。現在も豊富な外交経験と分析力を持って、日本の外交に関し今も深い洞察に基づく提言を発信し続けられています。

私が孫崎先生と直接お目にかかる縁を頂戴したのは、映画興行界の大先輩主催の宴席でした。不覚にも遅れて会場に到着し、空いていたのは最も上手の席。その目の前に、今回の宴席での講演にお越しいただいていた孫崎先生がいらしたのでした。事前に著書を拝見していたわけではなかったのですが、講演内容は実に示唆に富むもので、その意図されているところは一貫しています。強大な力を前にしても自らの進む道を自らの手で決めていく、そのためには何が必要なのか。言葉にしてしまえば単純ですが、それがいかに困難で、しかし尊いものなのかは、少しでも自分らしく生きることを意識した方にはわかっていただけると思います。

 

この著作の中では、アメリカと大陸の東端から西端まで国境を接しているカナダが、どのような成り立ちでアメリカ合衆国と違うアイデンティーを持ったのか、そして独立国家としてアメリカとどのような関係を様々な時点で持ってきたのかを通して、アメリカという超大国と付き合うこと、その中で真に敬意を持たれる存在であることはどのようなことなのかを理解させてくれます。

年代的には以下のような構成になっています。

 

18代首相 ディーフェンベーカー (ケネディと対立)

19代首相 ピアソン(北爆をめぐり、ジョンソンから文字通りの吊るし上げを食らう)

20、22代首相 トルドー(独自の対ソ政策と中共承認)

24代首相 マルルーニー(アメリカへの再接近)

26代首相 クレティエン(イラク戦争への不参加)

 

普通の日本人でカナダの歴代首相の名前を覚えている人は限られるほど、カナダの政治外交は馴染みの薄いものだと思いますが、内政にケベックの独立問題を抱え、内政・外交共日本とは比較にならない困難を孕みながら独立したあり方を貫いてきたカナダに学ぶことは、きっと日本のあり方に関して大きな示唆を与えてくれると信じてやみません。

もうすぐ大先輩の1周忌がやってきます。

私には孫崎先生との出会いが、朝鮮半島と日本、そして事業の中で数々の困難を包容力と強い意志で乗り切って来られたであろう大先輩が残された、私に対する宿題だと思っています。